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昔は物を思はざりけり

 これまで誤解していた歌の本来の姿を確認。

 「昔は物を思はざりけり」という下の句、確か高校の時、古文の先生が「自分がしたことを思い出して、恥ずかしいとか失敗したとか思うことがあるでしょう。しかし恥ずかしがることはないんですよ。昔は物を思はざりけり。昔の自分の不十分さ、未熟さが分かるようになった。成長している証拠ですよ」というような意味のことを言われたのを覚えています。

 これまで、ずーっとそう思って、赤面するようなことをふと思い出すたびに、自分を励ましてきました。

 ところが、上の句も含めて全体を正確に見てみようと思って調べると、本当は、『百人一首』にある権中納言敦忠という人の恋の歌だったのですね。『百人一首』など読むことも、遊ぶこともない無教養な生活を送っていますので、知りませんでした。

 本当の歌は、「逢見ての後の心にくらぶれば、昔は物を思はざりけり」で、「逢瀬をとげてみると、その後の悲しい気持ちにくらべれば、以前の恋はなんとも思っていなかったのとおなじだったなぁ」という意味らしい。

 おそらく古文の先生は、歌を説明した後の雑談で、下の句を援用して話してくれたのでしょう。本体を忘れて枝葉末節だけを覚えていました。でも、恋の歌で人間の心の動きの機微を感じ取るのもいいことですが、枝葉末節の雑談も人生のプラスになっているようです。

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