つぶやき自然科学

プロスタグランジンD2が脳内にたまると眠くなる

 睡眠中、脳はどんな状態になっているのでしょうか。『大阪バイオサイエンス研究所』のサイト、「分子行動生物学部門」のページに、「プロスタグランジンD2を中心に睡眠と覚醒の調節機構を探求」という記事が掲載されていました。ここでも、プロスタグランジンが働いているようです。

 20世紀はじめに、長時間眠らせないでいたイヌの脊髄液を、他のイヌの脳へ注射するとそのイヌが眠ってしまうことを発見して、自然な睡眠を誘発する「睡眠物質」の存在を、日本とフランスの研究者がそれぞれ予言。その後研究が進み、現在、数十種類の睡眠物質があることが分かっていますが、その中で最も強力なのが、プロスタグランジン(PG)D2とされています。

 PGD2は、クモ膜と脳室内の脈絡叢というところで産生され、脳脊髄液に分泌されて、脳内をめぐります。そして前脳基底部のクモ膜にあるPGD2受容体に作用して、脳の疲労回復に必要なノンレム睡眠を誘発することに。PGD2は、覚醒している間に産生され、その量が一定限度を超えることによって、覚醒ホルモンなどとのバランスが逆転し、眠気を催させることになるようです。

 実際に、PGD2を、動物(マウスでしょうか?)の脳に投与したところ、脳波や動物行動学的に見て、まったく生理的な自然な睡眠が行なわれることが証明されたということです。そういえば、病気による脊髄液の産生の低下、あるいは交通事故やスポーツによる衝撃で脊髄のクモ膜に穴が開いて脊髄液が漏れ出すことで起きる「脳脊髄液減少症」。そのさまざまな症状の中に、睡眠障害がありますが、このPGD2が関わっているのかもしれません。

『大阪バイオサイエンス研究所』:「プロスタグランジンD2を中心に睡眠と覚醒の調節機構を探求」(「研究部門について」⇒「分子行動生物学部門」をクリックしてください)

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風邪薬は治癒を遅らせる場合も

 『進化から見た医学』から関心を持ったところをもうひとつ、第2章「風邪をひいてから治るまで」に記述されている「解熱剤は何をするか」の項を引用します。風邪などで辛いのは、頭痛、倦怠感、咳、鼻づまり、場合によっては、下痢・嘔吐もあるかとおもいますが、よっぽど苦しい場合を除いて、安易に薬を服用しない方が治りが早いようです。

 「風邪薬」といわれる風邪の諸症状を緩和する薬品のうちポピュラーなものが、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなどの消炎鎮痛剤や解熱鎮痛剤と呼ばれる薬で、いずれも熱を下げる作用を持つ。薬の種類によって働き方に細かな差はあるが、いずれも脳に働きかけてプロスタグランジンの合成を阻害し、視床下部が設定体温を上げることを阻害する。
 プロスタグランジンは脳では設定体温を上げさせる働きを持つが、身体のいろいろな組織では炎症を引き起こしたり痛みのもとになったりする働きもあるので、多くの解熱剤は同時に抗炎症作用、鎮痛作用を持つ。解熱剤を使うと、設定体温が上がらないため発熱は抑えられるが、発熱のもとになるインターロイキンは血中から消えるわけではないので、薬の効き目がなくなる前に飲み続けないと、発熱が繰り返されることになる。
 また、プロスタグランジンは胃粘膜を胃液から保護する役目もあるため、解熱剤・鎮痛剤の副作用で胃粘膜が破壊され、場合によっては胃潰瘍になることもある。
 薬によって熱が下がると、不快感・倦怠感が軽減し通常通りに活動できるようになるが、気をつけなければならないのは、薬によってウイルスの増殖が抑えられるわけではないということである。それどころか、体温が上がらないことはウイルスが増殖するために都合のよい環境を与えることになるので、普通ならば数日から一週間くらいで身体から消失するウイルスが、いつまでも体内で増殖を続けることもある。その結果、薬の服用をやめるとウイルスの活動が顕在化して、「風邪のぶり返し」がしばしば起こる。
 また、倦怠感がなくなるので、どうしても安静にせずに活動しがちになるが、薬によって倦怠感を忘れた身体で活動すると、生体防御に振り向けられるエネルギーが少なくなり、結果的にウイルスの排除が遅れることにもつながる。
 同じように、風に伴う不快な諸症状である鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳、下痢、嘔吐をコントロールできる薬もたくさん開発されているが、不快感を解消するためにこれらの薬で抑えることは、ウイルスを追い出そうとする体の反応を抑えてしまうことになり、必ずしも身体にとってよいといえない場合もあるのである。
 さらに、特定の目的で服用したつもりでも、薬というのは全身の細胞に届けられるので、目的外の場所で目的外の作用が起こる「副作用」の可能性がどうしても避けられないことにも注意する必要があるだろう。

 しかし、今の社会、風邪をひいても仕事をしなければならないという状況は多々ありますし、身体を動かしていた方が、気が張り詰めているためか、いつのまにか風邪が治ってしまうという経験をした人もあるのではないかと思います。身体を休めてしまうと気が緩んで、重症化しそうな心配を感じるのではないでしょうか。

 一般的には、まず風邪薬を飲んでみて、それでもどうしようもなく倦怠感や熱などの症状が治まらないときに休む、という段取りになるのではないかと思います。しかも、寝込むときには、より強い薬を服用して休みます。理論と実際の統一をどこで図るべきなのでしょう。

 それと、前にも聞いたことがあったように思うのですが、解熱剤・鎮痛剤を飲むと、胃が荒れるのは、薬そのものの強さが原因ではなく、本来胃液から胃を守る作用を果たしているプロスタグランジンの合成が阻害されることが原因だったようです。

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収斂進化

 『進化から見た病気』には、「ダーウィン医学」について論じられていますから、当然、生命の「進化」についても、序論的に説明されています。第1章の「「ダーウィン医学」とは何か」の中に、興味深い記述がありました。

 オーストラリア・ニュージーランドには、カンガルーやコアラをはじめ、お腹に袋を持ち、その中で胎児にあたる時期の未熟な子を育てる有袋類と呼ばれる哺乳類が多くいる。一方、我々ヒトを含む哺乳類は、胎盤を持った胎児を子宮の中で育てるので、有胎盤類(正獣類)と呼ばれる。
 有胎盤類は有袋類から進化したもので、現存の有袋類と有胎盤類は共通の祖先を持つ。過去には全世界に有袋類が分布していたが、有胎盤類が出現した地域では有袋類のほとんどが滅びてしまい、有胎盤類が分布していないオーストラリア・ニュージーランドでのみ、絶滅を免れて生き残った。
 有袋類には多くの種類があるが、不思議なことに、有胎盤類に属するものと同じような姿・形をして、同じようなところに住み、同じようなものを食べている種が続々と見つかった。モモンガそっくりの姿をして木から木へと滑空するフクロモモンガ、長い舌を持ちアリを主食とするフクロアリクイ、地面に穴を掘って暮らすフクロモグラ、肉食のフクロネコや、1936年に絶滅が確認されたフクロオオカミなどが知られている。
 名前が示しているように、北半球にはそれらによく似た形態をした有胎盤類の種(モモンガ[タイリクモモンガ]、アリクイ、モグラ、ネコ、オオカミ)がいるが、対応するそれぞれの種は同じようなものを食べ、同じような生活パターンを持っている。これはオーストラリア・ニュージーランドにいる有袋類の祖先と、有胎盤類の祖先から別々に同じような進化が起こった結果、よく似たものが出現したのだと考えられている。
 このように、有袋類と有胎盤類の共通の祖先が二つに分かれた後で、それぞれのグループの中でよく似た動物種が生じてくる進化(収斂進化・収束進化)を見ると、進化というものにはなんらかの「規則」があることが推測される。

 ほんとうに不思議です。収斂進化。一度系統図の幹になる部分で分岐した有袋類と有胎盤類が、まったく別の形態をもった生物に進化するのではなく、生息する環境や食餌によって、とてもよく似た姿形をもつようになるとは。

 類は異なっても、自然環境に適した特徴を獲得した生物が繁殖し生き残っていく、食うか食われるかの一時的な生存競争ではなく、ゆったりとした永い時間をかけた自然淘汰のなせる業かもしれません。

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自然治癒機能と薬と用いた治療法

 『進化から見た医学』、第3章「ヒトは病気とどうつきあってきたか」というところに、人間が本来もっている自然治癒機能と薬を用いた治療法との関係を述べたところがあったので、引用して考えてみます。

 薬でさまざまな病気の症状が軽減されることが発見されると、人類はヒトの身体に起こるあらゆる不都合な症状を医療によって改善することをめざすようになった。頭が痛いとか、身体がだるいとか、咳が出るなど症状がはっきりと自覚されるものを、なんとかしたいというのは自然な欲求であり、世の中にはそうした自覚症状を緩和する、たくさんの種類の薬があふれている。
 ダーウィン医学では、薬を用いた治療についてもう一度考えることを推奨している。薬を使うなというのではなく、毒になることもある薬によって、もともと持っている身体の自然治癒力を、妨害してはいないかという観点を持つことが重要なのである。
 沈黙の臓器と呼ばれることもある肝臓は、機能障害を起こしてもあまり自覚症状が出ないことで有名であり、昔はかなり悪化して回復が難しくなってから発見されることが多かった。最近では血液検査などで、なり初期の段階から異常を検出できるようになったため、多くの人が助かっている。このような自覚症状の出にくい臓器の異常に対しては、臨床検査の値は重要な判定データになる。
 しかし、昨今の検査技術の発展は目覚しく、尿と血液だけでも何十項目もの値が出されることもある。そうなってくると、自覚症状はまったくなく、機能障害も起こっていないのに、さまざまな病名がつくことがある。とくに、生活習慣病といわれる糖尿病、高脂血症、高血圧などはそうしたものの代表である。
 また、超音波診断や食道から胃のバリウム検査によって、脂肪肝や微小ポリープなども発見されやすくなっている。もちろん、こうした状態がより深刻な病気のもとになる可能性はあり、予防医学的な検知から状況を監視することは好ましいのだろうが、「自覚症状」のない状態を検査値をもとに「治療」することが常に必要なのだろうか。
 ヒトの身体には、異常を元に戻す働きが備わっているのだ。拙速な治療行為が、身体の本来の働きを押しとどめてしまったり、また薬の副作用で不要な疾患を背負い込むことにならないように、医師としっかり相談すべきであろう。

 確かに、「検査技術の発展」で、ひと昔前では分からなかったであろうと思われるような、異常が発見されることがあります。しかし、すべてが治療の対象になるわけではなく、その必要性に応じていくつかのランクに分類されるようです。検査される側としては、たとえ経過観察の対象であったとしても、ひとつでもそういうところがあると気になるものですが、身体が信号を出していない以上、あまり心配しない方が良いということでしょう。

 身体に備わっている自然治癒機能を信頼することが大切ですが、素人が判断するのは難しいし、危険な場合もあります。たとえば、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病については、肝臓の機能障害と同じように、いづれも無症状で進行すると聞いていますから、薬物療法だけに頼るというのは良くないでしょうが、食事療法や運動療法といった「治療」は、自然治癒機能を高めるためにも必要だと思います。

 終わりに触れておきたいのは、ダーウィン医学が近代医学をどう見ているかということについて、著者の栃内氏は次のように述べています。

 本書では、まだまだ新しく未熟な段階にあるダーウィン医学という学問を紹介しながら、ヒトと病気の生物学的意味と、現代の医療の問題点を読み解いてみたい。
 進化という時間スケールからみるとあまりにも短い時間で発展してきた医療というものが、長い時間をかけて起こる進化と整合しない場合があるのはむしろ当然のことである。時に、ダーウィン医学の主張が近代医学に反対しているように聞こえることも多いかもしれないが、それはダーウィン医学という学問の本意でもないし、私の意見でもない。

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「ダーウィン医学」の考え方を学
風邪ウイルスは発熱によって消滅する

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風邪ウイルスは発熱によって消滅する

 風邪の主症状である発熱と倦怠感。「ダーウィン医学」によると、どちらも「風邪ウイルス」とたたかうために身体が備えた自然治癒機能だったようです。長くなりますが、その仕組みが面白いので、『進化から見た病気』の第2章[風邪をひいてから治るまで」より抜粋・引用します。

 風邪をひいて発熱したときには悪寒という寒気を感じるとともに、たとえ37度の体温があっても身体は寒いときと同じ反応を示す。それは、風邪ウイルスに感染した結果、設定体温が例えば39度に変えられてしまうためで、身体は体温が37度では寒いと感じ、設定体温の39度に達してはじめて寒気を感じない状態になるのである。
 設定体温を決めるのは、脳の中にある「視床下部」という小さな部分の働きである。視床下部にウイルスに感染したことを知らせるのは、全身の至るところに分布して生体防御の初動活動を行なっている、食作用を持った大型の白血球(マクロファージ)である。
 マクロファージは身体に侵入したウイルスを捕食(貪食)すると、警戒物質であるインターロイキン1やインターロイキン6と呼ばれるタンパク質を造って放出する。このタンパク質は血流に乗って脳に到達すると、脳にある神経細胞に働きかけてプロスタグランジンという物質を合成させるなどのいくつかの反応を引き起こし、最終的にはプロスタグランジンが身体の生理状態のコントロールセンターである視床下部に働きかけて、設定体温を上げる。
 身体が設定体温を上げるのは、進化の過程で獲得した、ウイルスとたたかうための生存に有利な性質である。風邪ウイルスが喉や鼻に感染するのは、身体の中でもそこが比較的温度が低いところ(33~34度)だからであって、高い温度に弱いウイルスはそれ以上高温になっている身体の奥深くには入っていけない。つまり、体温が上がり結果的に喉や鼻の温度も高くなるとウイルスの増殖が抑えられるので、発熱は効果的なウイルス増殖の抑制効果を持つ。
 ただし、体温が上がってもウイルスの増殖が低下するだけで、ウイルスが体内から消失するわけではない。最終的には、リンパ球などの免疫細胞の働きにより、ウイルスが処理される必要がある。じつは、さまざまな免疫細胞の働きも、体温が高いほうが速やかに進むことがわかってきている。
 また、発熱などと同時に見られる風邪の典型的な症状のひとつである倦怠感も、ヒトに安静を強いることでそのエネルギーを発熱や防御反応に振り向けることができるため、「有利」な性質だと考えられる。

 発熱によって悪寒と倦怠感を感じたら暖かくして安静にすることで、ほとんどの場合は数日のうちにウイルスに対する抗体が作られ、体内からウイルスが消滅する。身体からウイルスがいなくなると警戒物質のインターロイキンが作られなくなるので、プロスタグランジンも合成されない。脳内からプロスタグランジンがなくなると、視床下部の設定体温は常温に下がる。
 そのため、発熱時の体温では高すぎると感じることになり、今度は体温を下げるように身体が反応する。風邪の回復期に大量の汗をかくのは、高すぎる体温を下げるための働きであり、よくいわれるように汗をかくことで風邪が治るのではなく、風邪が治ったから汗が出るのだ。
 こうして、ほとんどの場合において、いわゆる「風邪ウイルス」によって引き起こされる風邪は薬の助けを借りることなしに自然治癒する。一年中どこにでもいる風邪ウイルスの蔓延する環境の中で生きるヒトは、風邪ウイルスへの対処法を進化させてきたのだ。

 なるほど、よく耳にするプロスタグランジンが働いているというようです。視床下部に働きかけて、設定体温を上げるために、通常の体温では寒気を感じる。そして、回復期には設定体温が下げられるから、今度は身体を冷やすために、汗をかくということになるわけですね。

 子どもの頃、風邪をひいたら分厚い布団にもぐり込んで、身体を熱くして無理やり汗をかいたものです。その後に、なぜかすっきり気分が良くなるので、風邪を治す常道と思っていました。ところが、最近の風邪治療では、そんなことはしないようで、不思議に思っていましたが、その理由がよく分かりました。

 でも、昔風のやり方も、布団にもぐり込んで横になることで身体は休まるし、温まって体温が上がるわけですから、身体からウイルスを消滅・撤退させるには、効果があるような気がしますが、どうなのでしょう。但し、あまり高体温になりすぎないよう、加減が必要かもしれません。

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「ダーウィン医学」の考え方を学ぶ

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「ダーウィン医学」の考え方を学ぶ

 今年(2009年)10月に、ドイツで行なわれた「世界保健サミット」で焦点があてられたという「ダーウィン医学」のことを、この『施術日誌+α』で触れたことがあります。その考え方に興味をもったので、もう少し深めてみたいと思っていたところ、『進化から見た病気 「ダーウィン医学」すすめ』(栃内新著)という本に出会いました。

 まず、「ダーウィン医学」とは何かということを、次のように説明しています(抜粋)。

 ダーウィン医学は、医師であるランドルフ・ネシーと進化生物学者であるジョージ・ウィリアムズによって、1991年に提唱された。誕生してからまだ時間の浅い若い学問であるが、人の身体に起こる病気を中心としたさまざまな不都合を、進化という観点から説明することをめざしている点がきわめてユニークだ。
 病気をこれまでと違う視点から捉え直すことで、ダーウィン医学は多くの新しい発見をもたらした。我々が病気だと思っているさまざまな疾病や疾患といった症状のうち、あるものは身体を守るための大切な防御反応であり、またあるものは人間が作り上げた文明や文化が原因となって引き起こされた「人災」であり、さらには病気を起こすと考えられていた遺伝子が、じつは我々の祖先が生き延びるために有益であったというようなことが、次々と明らかになってきたのである。
 このような発見が新たな治療法に直結するというわけではないが、将来の治療法開発につながったり、治療法の改善に寄与したりするような実際的提案ができることは間違いない。

 本書で扱う「ダーウィン医学」あるいは「進化医学」と呼ばれる学問は、ヒトという生物にとって病気とはどういうものなのかを、ヒトと病原生物の両者の視点を基礎に進化生物学・生理学的に読み解き、病気をよりよく理解し、病気とともに進化してきたヒトという生物を理解しようとする新しい学問分野である。
 今までの医学は、病気と呼ばれる不都合な諸症状をいかにして緩和するかということに心を砕いてきた。そこでは、時として科学的整合性よりも「実際に効くのだからよい医療だ」という、どちらかというと工学的な発想がつよかったのではないだろうか。ダーウィン医学では、病気の諸症状がどのようにして起こっているのかを解明するとともに、そうした症状の多くのものがヒトの進化にとって有利な意味を持っている、あるいは過去において有利な意味を持っていたということを説明しようとする。

 民間療法では、諸症状が出ている局所だけではなく、そこに重点をおきながらも、身体の状態を総体的にとらえて、施術するよう心がけますが、「ダーウィン医学」は、そういった段階を超えて、生物の進化という永い時間の流れの中で病気を捉えているようです。

 また、よく使われる「自己治癒力」とか「自然治癒力」という言葉がありますが、この免疫システムの機能も、病原生物とのせめぎ合いの中で、進化し獲得してきたものと考えると、面白そうです。

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進化的要因にまでさかのぼって考える「ダーウィン医学」

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高血圧と体内時計の関係

 不規則な生活と塩分の過剰摂取が高血圧症を引き起こすことになる。これまで当たり前のように思われていた「逆」健康訓ですが、これには体内時計のメカニズムが関わっていることを、京都大学大学院薬学研究科のグループが明らかにしました。

 『京都新聞』インターネットサイトに「体内時計が乱れ高血圧症に 京大グループが解明」、『asahi.com』に「高血圧、生活リズムつくる遺伝子関与? 京大教授ら実験」という記事(2009年12月14日)が掲載されていました。

 体内時計と疾患との関連を明らかにしたのは、世界で初めてのことらしい。マウスの体内時計を動かす遺伝子を操作して、不規則生活をしている状態、マウスの「血圧が夜高く、昼間低い」という夜行性のリズムが乱れた状態にしました。

 正常なら体内時計に合わせて、アルドステロンという副腎ホルモンの分泌を促進する合成酵素の制御・調節が周期的に行なわれます。ところが、体内時計が働かない状態では酵素の量が多いままの状態が続き、ホルモンが過剰に分泌されることに。この状態で塩分の高いエサを与えると、高血圧症になりました。

 アルドステロンというホルモンには、腎臓に信号を送って、ナトリウムと水分を再吸収させ、カリウムの排出を促す働きがあります。同じ作用をする酵素は、ヒトの副腎にもあり、この実験マウスの症状は、ヒトの「本態性」という接頭辞がついている原因不明の「高血圧症」によく似ています。

 やっぱり、人間も生き物ですから、体内時計に見合った生活リズムで、毎日過ごすのが一番です。しかし、人間社会には、思ったとおりには生きていけない枠組みがあるようです。でも、そういう中でも、可能な限り少しでも、体内時計に順応した生活をしていこうとする努力はできるかもしれません。

 それにしても、アルドステロン合成酵素の調節リズムが乱れるのは、体内時計を司る遺伝子に問題があるためなのか。それとも体内時計とずれた生活をするために起こるのか。二つの記事には、テーマにも少し違いがあるようですが、それによって対処の仕方も大きく異なってくるのでは・・・。

『京都新聞』:「体内時計が乱れ高血圧症に 京大グループが解明」
『asahi.com』:「高血圧、生活リズムつくる遺伝子関与? 京大教授ら実験」

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高血圧・高脂血症の改善に適した運動療法

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新型インフル 感染しても無症状や軽症の場合も

 基礎疾患がなくても死亡することがある新型インフルエンザですが、「季節性」と同じように、感染してもインフルエンザ特有の症状が出ない場合やかなり軽い症状ですむ場合もあることが分かりました。データにもとづいて確認されたのは初めてらしい。

 『asahi.com』「新型インフル、2割は症状なし、集団感染の中高生ら検査」および『CBnews』「新型インフル、感染も2割は無症状―大阪で血清疫学研究」という2009年12月11日付記事によると、大阪府が、5月に集団発生した関西大倉中学・高等学校の生徒・教職員647人から8月下旬に採血、中和抗体価の測定とアンケート調査を行なったようです。

 中和抗体というのは、病原体(抗原)にくっついて、細胞に感染したり増殖したりするのを妨げる抗体のこと。採血までに感染が確定していた21人の内、18人(85.7%)の中和抗体価が160倍以上だったことから、160倍以上あると、新型インフルエンザにすでに感染した可能性が非常に高いとして、これを基準に設定しました。

 調査によると、その中和抗体価が160倍以上が102人、10倍以上160倍未満が211人、10倍未満が334人。160倍以上で症状の有無が確認できた98人の内、インフルエンザ特有の症状を経験していたのは44人(44.9%)、18人(18.4%)はまったく症状がなく、36人(36.7%)はインフルエンザ特有の症状まで至らない軽症だったということです。

 感染していても、症状がない、あっても軽いというのは、幸いである反面、知らずしらずの内に、ウイルスをまき散らしている可能性があります。そのため、家族に感染者がいる場合には、症状が出ていなくても、気をつける必要があります。但し、その家族も無症状あるいは軽症という場合もあるかもしれませんが、禅問答になるのでここで止めておきましょう。

asahi.com:「新型インフル、2割は症状なし、集団感染の中高生ら検査」
CBnews:「新型インフル、感染も2割は無症状―大阪で血清疫学研究」
BioWorld:「抗原を黙らせる!~中和抗体~」

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新型インフルエンザは季節性に比べて下痢・嘔吐が多い

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1合程度の酒でも過剰な酸化ストレスでカロテノイドが減少

 『農業・食品産業技術総合研究機構』のサイトに、「喫煙・飲酒習慣と血中カロテノイド値との新たな関連を発見!-喫煙・飲酒は血中のβ-クリプトキサンチンなどを相乗的に減少させる可能性-」というプレスリリースが発表されていました。

 活性酸素による酸化ストレスから防御するため、生体にはさまざまな抗酸化システムが機能しています。その中で、食品から摂取するカロテノイドは、抗酸化物質として重要な役割を果たしており、果物や野菜の摂取量が多いほど、血中濃度が高くなります。

 ところが、喫煙や飲酒の習慣があると、血液中のカロテノイド濃度が低くなります。酒・タバコは、活性酸素の発生源となることから、その過剰な酸化ストレスを消すために、血中のカロテノイドが消費され少なくなると考えられてきました。今回の研究では、その関連を疫学的に証明したようです。

 喫煙者のカロテノイド血中濃度は、飲酒量が少ない場合には、飲むと飲まないにかかわりなく「有意に」低い、飲酒量が多い場合は「顕著に」低い。非喫煙者の飲酒の場合、軽度では飲まない場合とあまり変わらないようですが、25gを超える常習者では「有意に」低くなることが分かりました。

 アルコール25gというと、日本酒で1合程度ですか。大酒飲みの範疇ではないような気がしますが、それだけでも、身体にはかなりの酸化ストレスをかけているということでしょう。やっぱり、オーバーランを以前の状態に戻して、少し慎んだ方が無難でしょうか。

 カロテノイドの内、酒・タバコの影響を受けるのは、β-クリプトキサンチン、β-カロテン、α-カロテン。β-クリプトキサンチンはミカンに多く含まれるということです。不足を補うためには、ミカンやニンジン・カボチャなどをしっかり食べることも指摘されています。

「喫煙・飲酒習慣と血中カロテノイド値との新たな関連を発見!」

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身体活動が多いほど死亡リスクが低い
痛風の原因となる遺伝子が明らかに

*酸化ストレス 書き込みつつ干す 酒二杯*

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雪の結晶には六角形だけでなく三角形のも

 雪の結晶というのは、すべて六角形と思い込んでいましたが、三角形の結晶もあるようです。『WIRED VISION』のサイトに、「「三角形の雪の結晶」の謎、解明される」(2009年12月8日)という記事がありました。

 三角形の結晶の存在は、数百年前から知られていたようです。しかし、三角形になる理由については、これまで明らかにされていませんでした。

 今回、カリフォルニア工科大学の研究チームによって、空気力学の作用によるものではないかという手がかりが見えてきたようです。歯切れが悪いのは、あくまで自然に近い状態での研究室での実験結果だからでしょう。

 化学分野でも門外漢なのですが、六角形の結晶ができるのは、水分子の水素結合の配置に基づいているそうです。ですから、三角形の結晶も、基本形は六角形なのですが、6つの辺が長短3つずつ対になって構成されているため、見た目が三角形になるようです。

 結晶が形成される過程で、塵などの微小な不純物によって、結晶の一辺だけ上に傾くことがあるようです。そうすると、下を向いた辺が風の影響で伸びることで、辺の長さの違いが生まれます。いったん形成されると、そのまま三角形の形状がキープされるということです。

 それにしても、三角形の結晶か・・・。これまで自然に降ってくる雪で、まともな六角形の結晶さえ見たことがありません。結晶のようなものが、いくつかくっ付いていたり、見ているうちに溶けてしまったり。観察するためには、何らかの工夫と寒さに耐える忍耐力が必要なのかもしれません。

「「三角形の雪の結晶」の謎、解明される」(三角形結晶の写真付)

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人工大吹雪 「自然からの報復」は大丈夫か

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