施術研究

交感神経の緊張が痛みの悪循環を生み出す

 慢性痛について調べていると、NTT東日本関東病院ペインクリニック科の塩谷正弘部長が著した『痛みの専門外来 ペインクリニックがわかる本』という本を見つけました。痛みを治療する専門の医療部門であるペインクリニックは、神経ブロックがその中心的な治療法となるようです。

 そのなかに、交感神経の緊張と痛みに関して、興味深い記述がありました。交感神経ブロックは、痛みの悪循環を断ち切り、自然治癒力を高める技術ということです。あおぎりカイロプラクティックで行なっている髄節点法も、髄節ポイントを刺激することで、交感神経の過緊張を和らげることを狙っていますから、ベースになる考え方は共通しているようです。

 ペインクリニックの神経ブロックが、局所麻酔薬や神経破壊薬、あるいは高熱や冷凍によって、神経そのものに直接作用させるのに対して、皮膚ポイントを刺激する髄節点法は、知覚神経からの反射によって、交感神経に働きかけていくことになっています。民間療法ですから、刺激も穏やかで、安全ですが、作用はかなり緩慢になります。

 ペインクリニックの存在理由は、単に痛みをとめることにあるのではないのです。
 痛み止めの薬と同じように、効果の持続期限がくれば数時間単位でまた痛くなる、というのでは、ペインクリニックが存在する意味はまったくありません。痛みそのものの根元を断つ効果がある点こそ、ペインクリニックの最大の特徴のひとつです。
 例えば、急性の椎間板ヘルニアの場合、数回の神経ブロックで、しばしば痛みから解放されます。それも、もっともよく使う薬は二、三時間たてばすっかり効力を失ってしまう局所麻酔薬なのですが、薬が効き目をなくしてしまっても痛みは取れたままです。
 なぜなのかというと、神経ブロックは、悪循環に陥っている痛みの反射路(痛みが中枢に伝わる道)を断ち切ってしまうからです。体は痛みがあると、それに対する防御反応として交感神経などが緊張し、血流が悪くなったり筋肉が緊張したりします。すると、本来なら血液が運んできてくれる酸素が不足し、血液が運び去ってくれるはずの代謝物質はたまってしまいます。
 こうして体内の秩序が乱れると、乱れた部分で新しい痛みが生まれます。痛みは長く続くと、どんどんその度合いが増してくるように感じることがあります。それはまさに、痛みの悪循環のせいです。神経ブロックは、最初の痛みをおさえることで防御反応としての交感神経の緊張をやわらげ、この痛みの悪循環を防ぐのです。
『痛みの専門外来 ペインクリニックがわかる本』より引用

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人間の自然な動きを観察することが大切

 2009年7月29日の『ためしてガッテン』のテーマは、「もっと知りたい!介護負担激減のミラクル技 !!」。前にも同じテーマで放送されたのですが、見逃していました。今回は実践編ということで、さらに詳しく、わかりやすく説明があるとこのと。

 寝ている人を寝返りをさせたり、起き上がらせたり、立たせたりするとき、つい自分の力に頼ってしまいがちです。人間の身体は、バーベルやダンベルと違って、持ち上げるのに都合の良い形をしているわけではありませんから、つい無理な格好になって腰を痛めたりすることがあります。

 毎日自分で、起き上がったり、立ち上がったりしていますが、ほとんど無意識に、自覚せずに行なっているものですから、改めて「自然な動き」といわれても、すぐには頭に思い浮かびません。まず、無意識で行なっている自分や他人の動きを、よく観察してみることが大切です。

 どうも、「自然な動き」というのは、身体の構造を生かしたテコの原理によって、最小限の力で、できるだけ速く動かすことのようです。特に頭部の移動が、ポイントになるかもしれません。その動きにほんの少しの力で手助けするだけで、介護する人もされる人も、楽に体位を変換し、移動ができるようです。

 民間療法の施術でも、時には施術者の腰に負担がかかるような大技があります。関節の不整列の矯正が目的ですから、身体の伸展が必要で、介護の技術と同じようにはいかないと思いますが、研究してみる価値はありそうです。

 番組を見逃した方は、こちらをどうぞ
http://www9.nhk.or.jp/gatten/pdf/program/P20090729.pdf

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過外転症候群の「過外転」の意味

 「胸郭出口症候群」の中に、小胸筋が関与する「過外転症候群」があります。この「過外転」とは、どの関節に起きるのか。胸郭出口症候群は、肩の挙上を続ける作業によって起こる筋肉疲労や関節の変位が原因となることが多いため、肩関節の過外転と考えがちですが、「過外転症候群」の場合は少し違うようです。

 小胸筋は、大胸筋の深層、胸郭のすぐそばに位置していて、筋線維が第3~5肋骨を起始に、肩甲骨の烏口突起を停止部として付着しています。そのため小胸筋が硬結することによって、烏口突起のすぐ下を通っている腕神経叢、腋窩動脈・静脈などを圧迫し、肩から腕にかけて神経症状などを引き起こすことがあります。

 小胸筋の作用には、肩甲骨を下げる。肩甲骨を外転させる。肩甲骨を前方へ傾けさせる。肩甲骨を固定しているときには強制的吸気を助けるなどの働きがあります。ところが、肩関節(肩甲上腕関節)の運動には、外転も水平外転含めて、ほとんど直接的な関与はしていません。

 「過外転症候群」の「過外転」はおそらく、肩甲骨の外転運動を指しているものと思われます。肩甲骨の外転は、左右肩甲骨を外側へ拡げて、肩を前方へすくめるようにする動作です。そう言えば、先日来店されたHさん(40代 男性)、患側の小胸筋が硬くなっていましたが、両腕の前腕を机の上に置く、肘つき姿勢を続けたときに、チリチリしたシビレの症状が出てくるいうことでした。まさに肩甲骨の外転姿勢です。

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「爪揉み療法」は結果を急いではいけない

 自分ひとりでできる自律神経調整法に、「爪揉み療法」があります。手指の末節骨の遠位指節間関節に近い、少しくぼんだ部分。爪の付け根の少し近位になりますが、ここを両側から、もう一方の手の指で押します。押し方にも、痛みを感じるほど強く押したり、やさしく押したりとか、あるいは、一定の圧を加えるとか、揉んで強弱をつけるとか、さまざまなやり方があるようです。

 交感神経の過緊張を抑えて、副交感神経を活性化する効果があると言われています。しかし、これまで、夜眠れないときに何回か試してみましたが、効果があるようなないような、もうひとつ釈然としない感じでした。

 そんなとき、『日経メディカルオンライン』に「侮れない爪もみの効果 慢性不眠、私はこれで治しています~漢方・爪もみ~」(2009.6.12)という記事を見つけました。示唆に富むところがあったので、関係する部分を抜粋してみます。

爪の両脇にはツボがあり、軽く刺激することで自律神経のバランスを整える。「強く揉み過ぎると交感神経を刺激するので、優しくやるのがコツ」と水嶋氏。1本10秒程度、全ての手指と、入浴時に足爪も揉む。

 水嶋氏は、爪もみ健康法を紹介する本の著者だが、実は「一般の人の健康法としてはいいが、不眠患者の症状を改善するほどの効果があるとは思っていなかった」と打ち明ける。

 しかし、ある不眠の女性患者が「爪もみを続けていたら、2カ月目に睡眠薬なしで眠れるようになった」と報告してきた。それ以来、即効性はないが、手軽に簡単にできるので、患者にも薦めるようになったという。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cadetto/0901-t2/200906/511099.html

 一般に、薬指は交感神経を刺激することになるということから、爪揉みの対象からはずすと考えられています。しかし、水嶋氏は、「強く揉み過ぎる」ことが、「交感神経を刺激する」ことになるという考え方らしく、薬指も含めたすべての指に行なっているようです。

 また、注目するのは、「2ヶ月目に睡眠薬なしで眠れるようになった」女性患者の報告。すぐに効果が現れないのに、よく2ヶ月も粘り強く続けたものです。薬を使わずに体質を改善するのですから、やはり結果を急がず、じっくり気長に待つことが大切なのかもしれません。

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妊婦への施術は、特別な注意が必要

 「あおりぎカイロプラクティック」では、妊娠している女性に対しては、関節矯正の施術は行なわないことにしています。但し、中国整体については、妊娠の経過期間と施術法によっては、適用できる場合があります。『クリニカルマッサージ』のテキストを見ていると、「特別な配慮が必要な患者」というテーマの中に「妊婦」に関する解説がありました。手技療法としては共通している部分があるので、参考のためにチェックします。

 妊婦は体重が増え、身体バランスが悪くなるため、かなりの組織痛を覚える。特に腰、股関節、脚の組織痛は顕著で、マッサージ治療から得るところは大きい。しかしある種の予防措置は必要であり、特別な要件に対する配慮も必要である。
 妊婦の腹臥位は望ましくない。また妊婦にとって長時間背臥位の姿勢でいるのも辛い。施術部位によるが、妊婦には座位か側臥位が適している。枕を用いるのであれば腹臥位も可能である。治療家よりも患者自身が必要な物をわかっているので、枕については妊婦自身の選択に任せるべきである。適当な物が市販されている。ボディ・クッションを使用すれば、妊婦でも腹臥位が十分可能である。体位に関する問題点は、患者と協力し合うことで乗り越えることができる。
 身体には指圧師が陣痛を誘発すると考えている経穴が存在する。こういった見方を肯定する学術文献はほとんどないが、それらの経穴への施術は避けるのが賢明である(略)。またその他ではアメリカ産科婦人科大学(American College of Obstetrics and Gynecology)がガイドラインを出している。それによれば次のカテゴリーに該当する妊婦は、かかりつけの医師の同意を得て施術を受けるべきである。

  • 不妊治療を受けた、あるいは自然に妊娠するのが難しかった妊婦
  • 妊娠第1期での流産経験のある妊婦
  • 心臓病あるいは呼吸器疾患をかかえている妊婦
  • 妊娠異常を経験した妊婦
  • 多胎妊娠(双子、3つ子など)
  • 20歳以下ないし35歳以上の妊婦
  • 喘息にかかっている妊婦
  • 違法薬物に手を出したことのある妊婦

 妊婦に対して施術してならない経穴としては、肩井、合谷、三陰交、崑崙、臍より下にあるすべての腹部の経穴、次髎および他の仙骨上の経穴が指摘されています。

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緊張型頭痛を引き起こす筋肉

前頭筋
 付着 起始:眉上の皮膚ならびに部分的に眼輪筋および鼻根 停止:帽状腱膜
 作用 眉を引き上げ、額にシワを寄せる。後頭筋とともに、頭皮を後方へ動かし、額の皮膚を持ち上げ、髪を逆立たせる。
 関連痛領域 痛みは局所的で額に放散する。

後頭筋
 付着 起始:後頭骨の上項線 停止:帽状腱膜
 作用 帽状腱膜を固定し、頭皮を後方へ引っ張る。
 関連痛領域 頭の後面と上面に局限して痛みを発する。同側の目に関連痛を引き起こす。

眼輪筋
 付着 起始:内側眼瞼靭帯、前頭骨および上顎骨、ならびに瞼の組織 停止:眼窩
 作用 意識的に瞬きをし、素早く瞼を閉じる。目を細める。
 関連痛領域 目の上から鼻の横。

側頭筋
 付着 起始:側頭窩の骨と筋膜 停止:下顎の筋突起と下顎枝の前縁
 作用 顎関節を上げる。側頭部と下顎骨をつなぐ。
 関連痛領域 側頭部、眉の部分、頬、門歯および臼歯の全部または一部。

胸鎖乳突筋
 付着 起始:胸骨頭は胸骨柄の前面。鎖骨頭は鎖骨前面の内側3分の1
     停止:後頭骨の乳様突起の外側と上項線の外側半分
 作用 両側:頭と頚を安定させる。頚の過伸展と頭の後方への動きを阻止する。頚を屈曲させる。嚥下や呼吸にも関係する。
     片側:反対側に顔を回旋させる。顔を上に向ける。僧帽筋とともに、頭や頚を横に向かせる。
 関連痛領域 胸骨頭:後頭部、目の上の弓、頭頂、頬、顎および額の下。鎖骨頭:耳および耳の後方、前頭部。

僧帽筋
 付着 僧帽筋上部 起始:上項線、項靭帯と第1~第5頸椎の棘突起 停止:鎖骨の外側3分の1 僧帽筋中部 起始:第6頸椎~第3胸椎の棘突起と靭帯 停止:肩甲骨の肩峰と肩甲棘の上面 僧帽筋下部 起始:第4~第12胸椎の棘突起と靭帯 停止:肩甲挙筋の起始部に近い肩甲棘の内端
 作用 肩甲挙筋とともに肩甲骨を上げる。肩甲骨を上回旋させる。肩甲骨を引く。肩甲骨を下げる。両側:頭頚部を伸展させる。片側:頭頚部を回旋させる。
 関連痛領域 肩に位置する僧帽筋上部のトリガーポイントは、首から乳様突起、耳から側頭部にかけて痛みを生じさせる。また、下顎角の方へも痛みを生じさせる。僧帽筋中部と下部のトリガーポイントは、上背部を超えて頭蓋底の後頚部に、また左右の肩甲間に痛みを生じさせる。僧帽筋中部、特に肩峰近くの外端にかけてのトリガーポイントは、腕(近位と肘下部分)の外側に痛みを生じさせる。

頭半棘筋、頚半棘筋、頭最長筋
 付着 起始:第1~第6胸椎(頭半棘筋はさらに第3~第6頸椎)の横突起 停止:頚半棘筋は第2~第5頸椎の棘突起。頭半棘筋は後頭骨底部。頭最長筋は頭半棘筋の外側。
 作用 頭半棘筋および頭最長筋:頭部を伸展する。頚部を同側、側曲させる。頭が前傾した場合、頭を支える。頚半棘筋:頚部を伸展させる。頚部を側曲させる。頭部を反対側に回旋させる。
 関連痛領域 頭半棘筋および頭最長筋:側頭部、特に側頭部の前部。頚半棘筋:頭部後面(典型的な緊張型頭痛)

頭板状筋、頚板状筋
 付着 起始:第3頸椎~第6胸椎の横突起 停止:頚板状筋は第1頸椎、第2頸椎の横突起。頭板状筋は乳様突起と乳様突起近くの後頭骨の一部。
 作用 頚を伸展させ、同側に頭を回旋させる
 関連痛領域 頭板状筋:頭頂部 頚板状筋:目、側頭部、耳から後頭部、首の顎角部。

後頭下三角(上頭斜筋、下頭斜筋、大後頭直筋)
 付着 上頭斜筋 起始:第1頸椎横突起 停止:後頭骨下項線 下頭斜筋 起始:第2頸椎棘突起 停止:第1頸椎横突起 大後頭直筋 起始:第2頸椎棘突起 停止:後頭骨下項線外側部
 作用 頭を伸展かつ回旋させる。頭を同側に傾ける。
 関連痛領域 後頭部。側頭部から目にかけた部分。

参考:『クニリカルマッサージ』、『ボディ・ナビゲーション』

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首・肩こり、頭痛などが発生する構造的なメカニズム

 緊張型頭痛、首・肩こりの発生には、姿勢が大きく関与しています。解剖学的にみたそのメカニズムについて、『クリニカルマッサージ』に述べられていることから、学んでいきます。

 われわれの観察するところ、頭痛は頚部の筋肉のトリガーポイントに起因することが多い。そういった頭痛は、トリガーポイントを治療することで、「完全に治る」とは言わないまでも、頭痛の起こる回数や痛みの度合いを減らすことができる。われわれは、矢状正中線よりも前方へ耳が出てしまっている人をよく見かける。このような姿勢は、往々にして後頚部に筋筋膜トリガーポイントを形成する。Simonsは「頭を体幹より前に突き出していると、後頚部はリラックスする暇もなく、絶えず緊張していなければならない。そのため、そのような姿勢は、後頚部の筋筋膜トリガーポイントを活性化させてしまう」と述べている(David G. Simons, MD、2001年9月23日付私信)。しかし後頚部に現れたトリガーポイントだけを治療しても、痛みはめったに止まらない。長期にわたって痛みのない健やかな生活を送るには、姿勢ミスアライメントを引き起こしているもとを全身的に正さねばならない。

 頭が体幹より前に突き出した姿勢を続けていると、本来あるべき頚部の前弯が失われた「ストレートネック」という状態をつくりだしてしまうことがあります。パソコン操作や編み物などをする人で、首の細い、頚部の筋群の弱い人に多く見られます。そして、その前傾姿勢には、あまり日常的な意識にのぼりませんが、大胸筋が大きくかかわっているようです。

 大胸筋は姿勢アライメント、特にChapter 3で述べた「顔を前へ突き出した」姿勢に関して重要な役割を果たす。Simonsは次のように述べている。「顔を前へ突き出した姿勢は多くの場合、肩甲骨を前方に引っ張り、頭を前に猫背姿勢を取らせる大胸筋筋膜トリガーポイントによってもたらされる」(同上)

 大胸筋に拮抗して、肩甲骨を後内側に引く役割を果たしているのが菱形筋です。これは姿勢を正すときに意識する、上部胸椎から肩甲骨の内縁に付着する筋肉です。

 菱形筋は大菱形筋と小菱形筋があり、上背部の痛みの主原因である。肩甲骨を回旋させて肩関節を下げて、肩甲骨を内側に引く。菱形筋は、肩を前方に引っ張る胸筋の力により常に緊張状態にあることを忘れてはならない。このため、菱形筋の緊張は、常に大胸筋の緊張を関連している。

 姿勢が悪くなるのは、直立姿勢をとるヒトの身体構造そのものに原因があり、その中で行なう日常的な作業が筋肉の緊張を引き起こしているようです。

 脊柱を体全体との関連で考察するときには、以下の2つの事実を認識しておく必要がある。
・身体の重心は脊柱よりもかなり前方の骨盤部にある。
・(略)、腕と肩の構造は唯一の関節、胸鎖関節によって骨格に付着している。この付着も脊柱よりかなり前方である。
 この2つの事実は、前方への強い引っ張り力に対して、脊柱とそれに付着する筋肉が、姿勢を維持しなければならないことを示唆している。目の位置と腕の構造のため、実質的にヒトが行なうすべての作用は、頭、腕、および体幹を前方、下方、内方へ動かすことである。このような作用でわれわれの均衡を保つのは、(腰の筋肉に沿った)脊柱の浅筋の仕事である。悪い姿勢、すなわち頭が矢状正中線より前にあり、肩が内側に回旋しており、前肋間筋と腹筋が常習的に短縮している姿勢は、脊柱と後頚部に多大な緊張を与え、結果としてトリガーポイントを活性化させ、痛みを引き起こす。David G. Simonsによれば「筋筋膜トリガーポイントがいつ、いかにして引き起こされるかに関しては確実な科学データはない」とはいえ、「姿勢の問題を矯正することにより、筋筋膜トリガーポイントは解消するか治療が容易になる」ことは周知の事実である。

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解剖学の学習⑦ 大腿部の筋肉

 今度は、大腿部筋群の構造と作用について、『クリニカルマッサージ』の「大腿部の治療に当たって」という総論部分から学んでいきます。

 大腿部の強靭な筋肉は、前面(大腿四頭筋縫工筋)、後面(ハムストリングス筋)、外側(大腿筋膜張筋腸脛靭帯)、および内側(股関節内転筋)の4つの基本グループに分類される。大腿部の痛みは、骨盤内やその周囲の上層筋や下腿が原因であることもあるが、大腿部の筋それ自体が痛みの源である場合もある。

 大腿部の筋肉は、その主要機能が膝関節の運動や固定であることから、膝の痛みの主な原因となる筋である。膝をコントロールすることと大腿直筋と股関節内転筋が骨盤の位置に影響を及ぼすという2点から、姿勢の維持にとって大腿部筋は非常に重要である。

 大腿直筋は、上前腸骨棘(ASIS)に付着し、長内転筋短内転筋恥骨筋、および薄筋はすべて恥骨前面に付着する。このため、これらの筋肉はすべて骨盤の前方回旋に寄与している。一方ハムストリングス筋は、坐骨結節に付着し、骨盤を引っ張って後方回旋させることができる。大腿四頭筋とハムストリングス筋が互いに拮抗筋であるという場合、膝関節の屈曲と伸展におけるその反対の機能を念頭に思い浮かべているが、この2つの筋肉は骨盤の位置決めにおいても拮抗筋である。

 大腿部筋群の相対的な緊張は、寛骨臼内にある大腿骨頭の位置も決定し、それによって立位や歩行時の位置や動きも決定する。また大腿四頭筋群は、膝蓋骨を取り囲む共通腱によって脛骨に付着するので、これらの筋肉は膝蓋骨の位置を決定する。大腿四頭筋とハムストリングス筋はともに、膝関節にかかるストレスの位置とバランスを制御する。

 引用文の段落の一部を引用者が変更しています。なお、大腿直筋の付着部(起始)は、少し下にある突起、下前腸骨棘(AIIS)の間違いです。この後の大腿四頭筋の各論部分では、正確に記述されています。

 大腿部の筋群が、膝関節と大腿骨頭、さらに骨盤の位置にも影響を与えるということです。これまで、骨盤の位置にかかわる筋群として、脊柱起立筋群、腰方形筋、腸腰筋、股関節外旋筋、臀筋などを見てきましたが、大腿筋群もその一翼を担っています。特にその中でも、付着部と作用から、大腿直筋と股関節内転筋群が前方回旋に、ハムストリングス筋が後方回旋に関与しているようです。

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解剖学の学習⑥ 股関節の外旋筋群

 股関節の深部外旋筋には、梨状筋、大腿方形筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、上双子筋、下双子筋があります。梨状筋は、臀筋の深部、かつ坐骨神経の浅部にありますが、それ以外は、坐骨神経の深部に位置します。

梨状筋
 付着 起始:骨盤の前仙骨孔の縁と腸骨の大坐骨切痕
     停止:大転子の上縁
 作用 股関節を外旋。股関節を屈曲したとき大腿部を外転させる。
 関連痛領域 坐骨神経絞扼により脚の後部から足まで全体、ならびに腰部、股関節、鼠径部、会陰部、および直腸にかけて。

大腿方形筋
 付着 起始:坐骨結節の外側縁
     停止:転子間稜(大転子と小転子の間)
 作用 股関節を外旋させる
 関連痛領域 外閉鎖筋とともに、大転子下部のすぐ内側

内閉鎖筋
 付着 起始:閉鎖筋膜と骨盤表面
     停止:大転子の内側面
 作用 股関節の外旋

外閉鎖筋
 付着 起始:恥骨の上棘と下棘
     停止:大腿骨の転子窩
 作用 股関節の外旋

上双子筋
 付着 起始:坐骨棘と小坐骨切痕の縁
     停止:内閉鎖筋の腱を経て、大転子の内側面
 作用 股関節を外旋させ、関節を固定する。
 関連痛領域 なし

下双子筋
 付着 起始:坐骨結節
     停止:内閉鎖筋の腱を経て大転子の内側面
 作用 大腿を外旋させる
 関連痛領域 なし

 ここで、注目されるのは梨状筋です。他の外旋筋と異なり、坐骨神経の浅部を横切るように付着しているため、その過剰な収縮が坐骨神経を圧迫して、梨状筋症候群と呼ばれる神経障害を引き起こすことがあります。

 梨状筋が過剰収縮することで、股関節および坐骨(寛骨下部)が内方へ引き寄せられ、仙腸関節を支点にしてテコの原理で、寛骨上部にあたる腸骨が外方変位を引き起こすものと思われます。

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解剖学の学習⑤ 臀筋

 臀筋には、大臀筋、中臀筋、小臀筋の3つがあり、臀部脂肪組織の下にあります。大臀筋は、3つのうちで最も浅いところにある大きな筋肉で、線維が斜めに走っています。中臀筋は、臀部の外側面にあり、後部は大臀筋の深部に重なっていますが、前部は浅いところにあります。大臀筋、中臀筋ともに臀部の強靭な筋肉です。小臀筋は中臀筋の深部にありますが、大転子前面に停止しているため、少し違った動きをします。いずれも腰痛に関連している筋肉で、とくに大臀筋は腸腰筋の拮抗筋とされています。

大臀筋
 付着 起始:腸骨背面の後臀筋線、仙骨と尾骨の後面、および仙結節靭帯
     停止:腸脛靭帯(表面の4分の3)と大腿骨の臀筋粗面(後外側上方約4分の1)
 作用 股関節の伸展、外旋、外転および下線維による股関節の内転。
 関連痛領域 臀部全体、大腿後面上部へかけて。

中臀筋
 付着 起始:腸骨の前後臀筋線の間
     停止:大転子の外側面
 作用 股関節の外転、伸展、および内旋・外旋に寄与。歩行時に骨盤を固定する。
 関連痛領域 臀部を覆う領域。仙骨を覆う領域。内側腰部にかけて。大腿後面上部にかけて。

小臀筋
 付着 起始:腸骨の前および下臀筋線の間
     停止:大腿骨の大転子
 作用 股関節の外転、内旋、屈曲。
 関連痛領域 臀部および腰後部。大腿後面。下腿後面。大腿外側。下腿外側から足首へかけて。

 臀筋の付着部分から考えられる力の作用方向、特に大臀筋が腸腰筋(腸骨の前上方への動きを促す)との拮抗筋であることや関連痛領域をみると、臀筋の障害が腰痛によくある「腸骨の後下方変位」を引き起こす原因のひとつとして考えらるようです。

 しかし、臀筋と腰痛というとすぐに結びつかないような感じもしますが、腰痛で来られる方には、腸骨稜外側のすぐ下あたりに痛みを訴えられていることが多いようです。そこは、ちょうど大臀筋の起始部にあたる後臀筋線です。そういう場合は、臀筋全体にも拘縮がみられます。

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