風邪薬は治癒を遅らせる場合も
『進化から見た医学』から関心を持ったところをもうひとつ、第2章「風邪をひいてから治るまで」に記述されている「解熱剤は何をするか」の項を引用します。風邪などで辛いのは、頭痛、倦怠感、咳、鼻づまり、場合によっては、下痢・嘔吐もあるかとおもいますが、よっぽど苦しい場合を除いて、安易に薬を服用しない方が治りが早いようです。
「風邪薬」といわれる風邪の諸症状を緩和する薬品のうちポピュラーなものが、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなどの消炎鎮痛剤や解熱鎮痛剤と呼ばれる薬で、いずれも熱を下げる作用を持つ。薬の種類によって働き方に細かな差はあるが、いずれも脳に働きかけてプロスタグランジンの合成を阻害し、視床下部が設定体温を上げることを阻害する。
プロスタグランジンは脳では設定体温を上げさせる働きを持つが、身体のいろいろな組織では炎症を引き起こしたり痛みのもとになったりする働きもあるので、多くの解熱剤は同時に抗炎症作用、鎮痛作用を持つ。解熱剤を使うと、設定体温が上がらないため発熱は抑えられるが、発熱のもとになるインターロイキンは血中から消えるわけではないので、薬の効き目がなくなる前に飲み続けないと、発熱が繰り返されることになる。
また、プロスタグランジンは胃粘膜を胃液から保護する役目もあるため、解熱剤・鎮痛剤の副作用で胃粘膜が破壊され、場合によっては胃潰瘍になることもある。
薬によって熱が下がると、不快感・倦怠感が軽減し通常通りに活動できるようになるが、気をつけなければならないのは、薬によってウイルスの増殖が抑えられるわけではないということである。それどころか、体温が上がらないことはウイルスが増殖するために都合のよい環境を与えることになるので、普通ならば数日から一週間くらいで身体から消失するウイルスが、いつまでも体内で増殖を続けることもある。その結果、薬の服用をやめるとウイルスの活動が顕在化して、「風邪のぶり返し」がしばしば起こる。
また、倦怠感がなくなるので、どうしても安静にせずに活動しがちになるが、薬によって倦怠感を忘れた身体で活動すると、生体防御に振り向けられるエネルギーが少なくなり、結果的にウイルスの排除が遅れることにもつながる。
同じように、風に伴う不快な諸症状である鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳、下痢、嘔吐をコントロールできる薬もたくさん開発されているが、不快感を解消するためにこれらの薬で抑えることは、ウイルスを追い出そうとする体の反応を抑えてしまうことになり、必ずしも身体にとってよいといえない場合もあるのである。
さらに、特定の目的で服用したつもりでも、薬というのは全身の細胞に届けられるので、目的外の場所で目的外の作用が起こる「副作用」の可能性がどうしても避けられないことにも注意する必要があるだろう。
しかし、今の社会、風邪をひいても仕事をしなければならないという状況は多々ありますし、身体を動かしていた方が、気が張り詰めているためか、いつのまにか風邪が治ってしまうという経験をした人もあるのではないかと思います。身体を休めてしまうと気が緩んで、重症化しそうな心配を感じるのではないでしょうか。
一般的には、まず風邪薬を飲んでみて、それでもどうしようもなく倦怠感や熱などの症状が治まらないときに休む、という段取りになるのではないかと思います。しかも、寝込むときには、より強い薬を服用して休みます。理論と実際の統一をどこで図るべきなのでしょう。
それと、前にも聞いたことがあったように思うのですが、解熱剤・鎮痛剤を飲むと、胃が荒れるのは、薬そのものの強さが原因ではなく、本来胃液から胃を守る作用を果たしているプロスタグランジンの合成が阻害されることが原因だったようです。
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