自然治癒力

免疫の仕組みは奥深い ④ 老化と免疫

 年齢を重ねて70~80歳代になると、胸腺という免疫で重要な役割を果たす器官が、ほとんど痕跡程度になってしまいます。胸腺は幼児期4~5歳で退縮をはじめ、10歳代の前半で、重さこそ最大になりますが、かなりの部分が脂肪に置き換わり、40歳代では10分の1になります。

 胸腺は、リンパのT細胞を教育して「自己」と「非自己」を認識する能力を授ける重要な役割を担っています。T細胞には、有効な抗体の生産をB細胞に指示するヘルパーT細胞、ウイルスに感染した細胞を破壊するキラーT細胞、間違って「自己」と反応するリンパ細胞を抑制するサプレッサーT細胞があります。

 胸腺の退縮によって、T細胞を教育して全身に供給する働きが鈍り、免疫機能が低下します。高齢者の直接的な死因のトップは病原体による感染症です。通常は問題にならないような弱い微生物の侵入が、致命的な病気を引き起こすことがあります。

 また、T細胞の供給の低下によって、体内に「自己」のさまざまな成分と反応する物質が現れるようになるとともに、反対に「非自己」による刺激を与えても的確な反応をしなくなります。加齢とともに現れるこれらの反応は、自己免疫症のような急激な症状は起こしませんが、「自己」の細胞や臓器の衰えを進行させることになります。

 『免疫のしくみ』では、胸腺は生命時計であり、その退縮は、「必然的に世代の交代を促す、積極的な生命現象なのかもしれません」と述べています。アンチエイジングをめざす者としては、ちょっとさびしいような気がしますね。自分の経験からして、10歳代前半はそんなに元気だったかなぁ。確かに高齢者が感染症に弱いのは分かりますが、胸腺だけが、免疫機能を牛耳るものなんでしょうか。

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免疫の仕組みは奥深い ③ 癌と免疫

 『免疫のしくみ』によると、免疫の定義を「『自己』と『非自己』を識別して、個体としての独立性や統一性を守る仕組み」としています。この「自己」と「非自己」の識別が、癌に関しても重要なキーワードのようです。

 「癌は、もともとは『自己』の一部であった細胞が変化していまい、『自己』の秩序から逸脱して自分勝手に無原則な増殖を始めることによって起こります。癌細胞は、いわば体内で『非自己』化してしまった細胞です」

 「じつは、私たちの体内では日常的に一定の頻度で癌細胞が発生しているのですが、そのほとんどは極めて早期に「ナチュラルキラー(NK)細胞」と呼ばれる免疫細胞によって破壊されてしまうのです」。「発癌の初期段階で働くナチュラルキラー細胞に続いて、(ヘルパー)T細胞の一種も、癌細胞の表面に現れる特有のタンパク質分子(抗原)を見つけ出し、他の(キラー)T細胞の助けを借りて癌細胞の排除に乗り出します」。NK細胞も、T細胞も、リンパ球です。

 それなら、癌細胞の増殖は免疫で抑えられるはずなんですが、実際にはそううまくは行かないのです。「このように免疫が働いているのに、しばしばそれをかいくぐって癌細胞は発育してしまう。癌細胞がもともとは『自己』の細胞であったという背景がそこに深く関係していますし、癌細胞自身もさまざまな手を打って免疫を目くらましするのです」。

 癌細胞は、『非自己』と認識されないように、表面から抗原のみならず、いろいろなタンパク質分子を消し去ることもします。また逆に癌抗原の一部は、サプレッサーT細胞を刺激して免疫反応を抑えたりすることもあるそうです。しかも、NK細胞は年齢とともに、働きが落ちてきます。

 そうやって生き残ったやり手の癌細胞を、「安保免疫学」のようにストレスを避けて、しかも適度の運動を行なう健康生活による自律神経のバランスを保つことで、排除できるのか。確かに癌になりにくくはなるかもしれませんが、果たして、転移したような癌を、現代医学の定番療法である「手術と薬物療法と放射線療法」をストップしても、いやその方がより効果的に自然治癒させることができるというのか。まだ自然治癒力の勉強は続きます。

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免疫のしくみは奥深い ② 脳神経系・内分泌系・免疫系の関係

 『免疫のしくみ』には、「近代医学は、肝臓・腎臓・心臓・肺・脳などというように臓器単位でその働きや病気を研究するのが中心だったので、まとまった臓器を作らない免疫系が初め盲点となっていたことは否めません」と書かれています。

 「初め盲点となっていた」の「初め」が何時のことか定かでありませんが、20世紀半ばから本格的な研究がすすめられたそうです。この本の出版は、2001年です。この時点でも、すでに研究は、かなり進んでいるように見受けられます。その後の7年間での免疫学の発展についてはさらに研究してみる必要があります。

 特に、「脳神経系・内分泌系・免疫系という三つの調節機構が、じつは平衡的に働き合って個体の全体性を保っている」として、脳神経系・内分泌系・免疫系の関係については、今後の研究に期待するとして、次のように述べています。

 「免疫細胞によって作られるインターロイキン(IL)1というサイトカインが、脳に働いて発熱を起こさせる」「逆に、脳細胞どうしの情報伝達に使われる『神経伝達物質』のいくつかを受け入れるようなレセプター(受容体)が、免疫細胞の表面にも備わっています。なかでも、ストレスを感じたときに脳内でつくり出される物質が免疫細胞に影響を及ぼし、免疫系全体の働きを高めたり低めたりしています。もっと驚くことに、脳細胞が免疫細胞と同じ物質を作ったり、反対に免疫細胞が脳細胞を同じ物質を作ったりもするのです」

 そして「気分と体調の相関関係は昔から経験的に知られ、『病は気から』という言葉で言い表されてきましたが、そのメカニズムが科学的にも徐々に解明されつつあると言っていいでしょう。細かな実態はまだ不明ですが、癌などを始めとする、ある種の病気に対して精神面からアプローチする治療法も、あながち的外れではありません」と述べています。

 これは、「安保免疫学」のいう交感神経~アドレナリンの分泌~顆粒球の活性化、副交感神経~アセチルコリンの分泌~リンパ球の活性化。二つの自律神経のバランスのくずれから病気がおこるとする「白血球―自律神経支配」に非常に近い考え方です。

 『免疫のしくみ』と「白血球―自律神経支配」の理論の時期的関係とその中身について、研究してみる必要がありますが、脳神経系・内分泌系・免疫系の関係についてよく似た捉え方をしているのは、興味深いところです。

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免疫のしくみは奥深い ① 2兆個の免疫細胞

 自然治癒力のことから、免疫学へと発展してきましたが、今度は「安保免疫学」から少し離れて、免疫を検討してみたいと思います。東京理科大学生命科学研究所の安部良教授監修の『免疫のしくみ』(PHP研究所)をもとに、アトランダムに免疫の世界をたどっていきます。

 「ひとりの人間の身体は、約60兆個の細胞で成り立っています。そのうち、約2兆個の細胞が免疫を担っていて、重さにすると約1キログラムに達します。脳をつくる細胞が約1000億個、肝臓の細胞が2500億個ですから、これらの臓器と比べてもはるかに数の多い細胞が、血管や、血管と同じように全身に張りめぐらされているリンパ管の中を流れただよい、皮膚、気管、腸管などにも分布して動きまわりながら、私たちの体内で働いていいるのです」

 「脳の細胞が神経線維でしっかりとつなぎ合わされているのとは違って、免疫系の細胞は一つひとつが独立して浮遊している細胞なのです。また脳の細胞が生後は分裂したり入れ替わったりしないのに対して、免疫系の細胞は毎日100億個程度が寿命を終えて死に、同じ数の細胞が新たに生まれています」

 免疫系の細胞、2兆個ですか、思っていたより多いですね。脳や肝臓の細胞数よりはるかに多いとは驚きです。しかも、それが固まったところにあって機能するのではなく、身体の中をバラバラに漂いながら、いざという時には、伝達物質で連絡を取り合って、コラボレーションをするのですから不思議です。

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『自律神経と免疫の法則』を研究しています

 これまで、安保理論を分かりやすく解説したものを読んでいましたが、一般読者向けに分かりやすくしたためか、根拠が跡付けられていないため、一方的・独断的な感じを受けていました。

 しかし、昨日さらっと一部紹介した安保徹著『自律神経と免疫の法則』を読み進めてみると、かなり専門的ですが、研究資料も豊富で、理論的な根拠がよく分かります。

 自律神経の作用と顆粒球、リンパ球の関係、それと日内リズムや気候との関係、さらに顆粒球と微生物感染、リンパ球とウイルス感染などについて、研究資料に基づいて説明されています。

 カイロプラクティックは現在のところ、もっぱら整形外科的な筋・骨格系の疾患に対処するようになっていますが、もともとは、脊柱のズレによる神経の圧迫を矯正することにより、神経伝達物質の循環を回復して、全身に起こる症状を改善するのが本来の姿です。

 全身の器官を調整するのは、自律神経系統になります。そういう意味で、自然治癒力と自律神経・免疫系の関係については、以前から関心を持っていましたので、とても興味深い分野です。まだ読み始めたところですので、これからが楽しみです。

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自然治癒力は発熱から?

 安保徹教授の書籍を、引き続き研究してます。社会認識などに少し違和感を覚えることもありますが、医学的な問題はなかなか興味深く読んでいます。

 『病は気からの免疫学』という本のなかに、「自然治癒力の本体」という章があります。自然治癒を極限までつきつめると、「整体の発熱」に行きつく。生体の発熱は代謝の亢進であり、その高まりによって病原体を除き、壊れた組織を修復することができると述べています。

 それに対して「現在、医学では熱を嫌って消炎鎮痛剤やステロイドが使われることが多いので、病気がなおりにくく」なると指摘しています。

 また、「抗ウイルス剤より自然治癒」と題して、炎症、痛み、発熱は、患者にとって不快ですが、治るためのステップであり、炎症を起こして血流を増やし、発熱してリンパ球を増やし活性化して、ウイルスとたたかうことが大切で、これが自然治癒であると記しています。

 安保氏は、これまでの医学的治療法を否定しているようですが、これはなかなか難しい問題です。そのような判断は、民間療法者としての立場と力を超えた次元の問題です。しかし、「自然治癒は発熱から」というテーマは、今後の施術に対する見方を検討する課題を提起しているように思えます。

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自然治癒力と副交感神経優位

 いま、新潟大学大学院医学部教授の安保徹氏の『病気を治せる医学――自律神経免疫医学』という著書を読んでいます。

 まだ読んでいる途中ですが、痛み止めなど薬品を多用する現代の医学に疑問を投げかけ、人間が備えている自然治癒力を高める治療を訴えられているようです。

 その中で、特に代替医療について、「20世紀の医学は、がんにはがん細胞の縮小、膠原病には炎症や痛みからの解放といった攻撃的な治療が大勢を占めていたように思います。このような治療は数ヶ月、一~二年単位ではいかにも治療効果が上がったかのようにみえますが、患者はその後急速に消耗してしまいます。代替医療はこのような攻撃的、消耗的治療に対する反省から生まれたものといえます」

 「代替医療には多くの共通点があります。どの治療法もリラックス反応を呼び起こし、副交感神経優位の体調にしていくことです。副交感神経優位は組織障害の修復のための血流を回復させ、同時にリンパ球を増やして免疫能を上昇させます。このようにして治癒に向うのです」と記しています。

 著者の言う代替医療の中にカイロプラクティックはありませんが、東洋医学が上げられています。リラックス反応という点では、中国整体などはそのまま当てはまるといえるでしょう。何しろ施術中に眠る方が多いですから。

 リラックス反応による副交感神経の優位か。それが自然治癒力を高めることになるなら、プラセボ効果も説明できるかも知れません。興味深い本です。さらに読み進めてみます。

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自然治癒力③~自己再生機能

 自己再生機能とは、外傷などによって損傷した皮膚や組織・骨などが、時間がたつと元に修復される身体の働きのことです。

 細胞内のDNAに記憶されている機能です。DNAに従って細胞が再生されますが、そのためには細胞を構成するたんぱく質の源になるアミノ酸が必要となります。再生機能をしっかり働かせるためには、アミノ酸をバランスよく取ることが必要です。

 細胞には、皮膚などの再生系細胞と心筋、脳・神経細胞など非再生系の細胞があります。しかし、再生系細胞の再生回数にも、限度があると言われています。

 トカゲやイモリなどの下等動物では、尻尾や脚の再生が見られますが、人間を含む高等動物では、再生できる範囲は限られています。しかし、臓器培養やES細胞、骨髄にある間葉系幹細胞などを用いた再生医療の研究が進んでいます。

 特に間葉系幹細胞は、骨、軟骨、脂肪、心臓、神経、肝臓の細胞などになることが確認され、「第二の万能細胞」になると期待が寄せられています。

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自然治癒力②~自己防衛機能

 自己防衛機能には、抗酸化機能と免疫機能があり、体内に侵入したり、体内で発生する異物を分解・排除する機能です。

 体内に侵入しようとする異物は、ほとんどの場合、身体の表面を覆う皮膚や粘膜などの防護壁で食い止められますが、キズや火傷などによって損傷しているときには感染の危険性が高くなります。また、ガン細胞などのように体内で、絶えず発生している異物もあります。

 抗酸化機能は、活性酸素から細胞を守る働きです。様々な細胞内酵素によって行なわれますが、最も重要なのは、SOD(スーパー・オキサイド・ディムスターゼ)です。抗酸化機能の働きが悪くなると、老化が早まり、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、肝機能障害などの障害、細胞のガン化なども起こるといわれています。

 免疫機能は、体内に入った病原菌・ウイルスや寄生虫、発生したガン細胞などを攻撃・殺傷・排除する働きです。その主役は、単球・好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球などの白血球細胞です。免疫機能には、数種の白血球がそれぞれ独自に反応を起こして異物に対応する自然免疫と、協同して対応する獲得免疫があります。その協同作業には、情報伝達機能を担うサイトカインなどの役割も重要になります。 

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自然治癒力①~恒常性維持機能

 恒常性維持機能(ホメオスタシス)とは、内部や外部の環境因子に変化があっても、生体の状態を一定に保とうとする性質のことです。

 体温、血圧、体液の浸透圧、pHなど生じた変化を打ち消し、恒常性を維持するために、主に自律神経や内分泌系が働き、各器官の連携を調節します。

 外気温の変化に抗して、酵素などが機能する至適体温に保つため、高すぎる場合は発汗や皮膚血管の拡張で温度を下げようとし、低い場合はふるえることなどによって温度を上げようとします。

 水分やミネラルなどの摂取と排出の調整によって、体液の浸透圧やpHが一定に保たれるようになっています。

 運動などによって酸素の消費量が高まれば、心臓の拍動促進によって酸素の供給量を増やしますが、身体が休んでいるときには、ペースダウンします。

 各器官の見事な連携によって、身体のバランス・恒常性が保たれていますが、ストレスや疾患によって、自律神経や内分泌系の機能が十分果たせなくなると、様々な症状を引き起こすことがあります。

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自然治癒力って何でしょう

 カイロプラクティックの哲学では、椎骨の変位を矯正することによって、人間が本来もっている先天的知能(イネイトインテリジェンス)を活性化させ、症状の改善をおこなうとされています。

 イネイトインテリジェンスそのものは、人体という生命体の構築やその中で起こる現象を、神秘化した表現です。これを自然治癒力と読みかえることが多いのですが、本来のイネイトインテリジェンスの意味としては、もっと広いカテゴリーにとらえられるべきだと思います。

 イネイトインテリジェンスそのものが存在するかどうか、古典的哲学の立場を離れ神秘性を排して、これを自然法則の合目的性の有無として考えたとしても、おそらく決着がついていない問題でしょう。

 大きく考えれば、物質の発展や生命の進化・発展が、偶然性である自然淘汰の積み重ねであるのか、それとも自然の中に常に何らかのより高い範疇をめざすような法則があるのか。なかなか難しい問題です。

 イネイトインテリジェンスのことは置くとして、自然治癒力という言葉もかなり以前から使われています。確かに生命体には自然治癒力が本来備わっているようです。

 自然治癒力には、恒常性機能、自己防衛機能、自己再生機能の3つがあります。身体の機能のバランスや秩序を正常に保つ。病原菌などの異物や変質した自分の細胞を殺傷する。細胞を修復したり新しいものにかえる。健康維持に欠かせないものです。

 ただ、自然治癒力を高めると称して、疑似科学や非科学が跋扈しているようなので、本当の自然治癒力とは何か、それを活性化させるにはどうしたら良いのか。これから考えてみたいと思います。

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