自然治癒力

風邪薬は治癒を遅らせる場合も

 『進化から見た医学』から関心を持ったところをもうひとつ、第2章「風邪をひいてから治るまで」に記述されている「解熱剤は何をするか」の項を引用します。風邪などで辛いのは、頭痛、倦怠感、咳、鼻づまり、場合によっては、下痢・嘔吐もあるかとおもいますが、よっぽど苦しい場合を除いて、安易に薬を服用しない方が治りが早いようです。

 「風邪薬」といわれる風邪の諸症状を緩和する薬品のうちポピュラーなものが、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなどの消炎鎮痛剤や解熱鎮痛剤と呼ばれる薬で、いずれも熱を下げる作用を持つ。薬の種類によって働き方に細かな差はあるが、いずれも脳に働きかけてプロスタグランジンの合成を阻害し、視床下部が設定体温を上げることを阻害する。
 プロスタグランジンは脳では設定体温を上げさせる働きを持つが、身体のいろいろな組織では炎症を引き起こしたり痛みのもとになったりする働きもあるので、多くの解熱剤は同時に抗炎症作用、鎮痛作用を持つ。解熱剤を使うと、設定体温が上がらないため発熱は抑えられるが、発熱のもとになるインターロイキンは血中から消えるわけではないので、薬の効き目がなくなる前に飲み続けないと、発熱が繰り返されることになる。
 また、プロスタグランジンは胃粘膜を胃液から保護する役目もあるため、解熱剤・鎮痛剤の副作用で胃粘膜が破壊され、場合によっては胃潰瘍になることもある。
 薬によって熱が下がると、不快感・倦怠感が軽減し通常通りに活動できるようになるが、気をつけなければならないのは、薬によってウイルスの増殖が抑えられるわけではないということである。それどころか、体温が上がらないことはウイルスが増殖するために都合のよい環境を与えることになるので、普通ならば数日から一週間くらいで身体から消失するウイルスが、いつまでも体内で増殖を続けることもある。その結果、薬の服用をやめるとウイルスの活動が顕在化して、「風邪のぶり返し」がしばしば起こる。
 また、倦怠感がなくなるので、どうしても安静にせずに活動しがちになるが、薬によって倦怠感を忘れた身体で活動すると、生体防御に振り向けられるエネルギーが少なくなり、結果的にウイルスの排除が遅れることにもつながる。
 同じように、風に伴う不快な諸症状である鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳、下痢、嘔吐をコントロールできる薬もたくさん開発されているが、不快感を解消するためにこれらの薬で抑えることは、ウイルスを追い出そうとする体の反応を抑えてしまうことになり、必ずしも身体にとってよいといえない場合もあるのである。
 さらに、特定の目的で服用したつもりでも、薬というのは全身の細胞に届けられるので、目的外の場所で目的外の作用が起こる「副作用」の可能性がどうしても避けられないことにも注意する必要があるだろう。

 しかし、今の社会、風邪をひいても仕事をしなければならないという状況は多々ありますし、身体を動かしていた方が、気が張り詰めているためか、いつのまにか風邪が治ってしまうという経験をした人もあるのではないかと思います。身体を休めてしまうと気が緩んで、重症化しそうな心配を感じるのではないでしょうか。

 一般的には、まず風邪薬を飲んでみて、それでもどうしようもなく倦怠感や熱などの症状が治まらないときに休む、という段取りになるのではないかと思います。しかも、寝込むときには、より強い薬を服用して休みます。理論と実際の統一をどこで図るべきなのでしょう。

 それと、前にも聞いたことがあったように思うのですが、解熱剤・鎮痛剤を飲むと、胃が荒れるのは、薬そのものの強さが原因ではなく、本来胃液から胃を守る作用を果たしているプロスタグランジンの合成が阻害されることが原因だったようです。

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風邪ウイルスは発熱によって消滅する

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自然治癒機能と薬と用いた治療法

 『進化から見た医学』、第3章「ヒトは病気とどうつきあってきたか」というところに、人間が本来もっている自然治癒機能と薬を用いた治療法との関係を述べたところがあったので、引用して考えてみます。

 薬でさまざまな病気の症状が軽減されることが発見されると、人類はヒトの身体に起こるあらゆる不都合な症状を医療によって改善することをめざすようになった。頭が痛いとか、身体がだるいとか、咳が出るなど症状がはっきりと自覚されるものを、なんとかしたいというのは自然な欲求であり、世の中にはそうした自覚症状を緩和する、たくさんの種類の薬があふれている。
 ダーウィン医学では、薬を用いた治療についてもう一度考えることを推奨している。薬を使うなというのではなく、毒になることもある薬によって、もともと持っている身体の自然治癒力を、妨害してはいないかという観点を持つことが重要なのである。
 沈黙の臓器と呼ばれることもある肝臓は、機能障害を起こしてもあまり自覚症状が出ないことで有名であり、昔はかなり悪化して回復が難しくなってから発見されることが多かった。最近では血液検査などで、なり初期の段階から異常を検出できるようになったため、多くの人が助かっている。このような自覚症状の出にくい臓器の異常に対しては、臨床検査の値は重要な判定データになる。
 しかし、昨今の検査技術の発展は目覚しく、尿と血液だけでも何十項目もの値が出されることもある。そうなってくると、自覚症状はまったくなく、機能障害も起こっていないのに、さまざまな病名がつくことがある。とくに、生活習慣病といわれる糖尿病、高脂血症、高血圧などはそうしたものの代表である。
 また、超音波診断や食道から胃のバリウム検査によって、脂肪肝や微小ポリープなども発見されやすくなっている。もちろん、こうした状態がより深刻な病気のもとになる可能性はあり、予防医学的な検知から状況を監視することは好ましいのだろうが、「自覚症状」のない状態を検査値をもとに「治療」することが常に必要なのだろうか。
 ヒトの身体には、異常を元に戻す働きが備わっているのだ。拙速な治療行為が、身体の本来の働きを押しとどめてしまったり、また薬の副作用で不要な疾患を背負い込むことにならないように、医師としっかり相談すべきであろう。

 確かに、「検査技術の発展」で、ひと昔前では分からなかったであろうと思われるような、異常が発見されることがあります。しかし、すべてが治療の対象になるわけではなく、その必要性に応じていくつかのランクに分類されるようです。検査される側としては、たとえ経過観察の対象であったとしても、ひとつでもそういうところがあると気になるものですが、身体が信号を出していない以上、あまり心配しない方が良いということでしょう。

 身体に備わっている自然治癒機能を信頼することが大切ですが、素人が判断するのは難しいし、危険な場合もあります。たとえば、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病については、肝臓の機能障害と同じように、いづれも無症状で進行すると聞いていますから、薬物療法だけに頼るというのは良くないでしょうが、食事療法や運動療法といった「治療」は、自然治癒機能を高めるためにも必要だと思います。

 終わりに触れておきたいのは、ダーウィン医学が近代医学をどう見ているかということについて、著者の栃内氏は次のように述べています。

 本書では、まだまだ新しく未熟な段階にあるダーウィン医学という学問を紹介しながら、ヒトと病気の生物学的意味と、現代の医療の問題点を読み解いてみたい。
 進化という時間スケールからみるとあまりにも短い時間で発展してきた医療というものが、長い時間をかけて起こる進化と整合しない場合があるのはむしろ当然のことである。時に、ダーウィン医学の主張が近代医学に反対しているように聞こえることも多いかもしれないが、それはダーウィン医学という学問の本意でもないし、私の意見でもない。

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「ダーウィン医学」の考え方を学
風邪ウイルスは発熱によって消滅する

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風邪ウイルスは発熱によって消滅する

 風邪の主症状である発熱と倦怠感。「ダーウィン医学」によると、どちらも「風邪ウイルス」とたたかうために身体が備えた自然治癒機能だったようです。長くなりますが、その仕組みが面白いので、『進化から見た病気』の第2章[風邪をひいてから治るまで」より抜粋・引用します。

 風邪をひいて発熱したときには悪寒という寒気を感じるとともに、たとえ37度の体温があっても身体は寒いときと同じ反応を示す。それは、風邪ウイルスに感染した結果、設定体温が例えば39度に変えられてしまうためで、身体は体温が37度では寒いと感じ、設定体温の39度に達してはじめて寒気を感じない状態になるのである。
 設定体温を決めるのは、脳の中にある「視床下部」という小さな部分の働きである。視床下部にウイルスに感染したことを知らせるのは、全身の至るところに分布して生体防御の初動活動を行なっている、食作用を持った大型の白血球(マクロファージ)である。
 マクロファージは身体に侵入したウイルスを捕食(貪食)すると、警戒物質であるインターロイキン1やインターロイキン6と呼ばれるタンパク質を造って放出する。このタンパク質は血流に乗って脳に到達すると、脳にある神経細胞に働きかけてプロスタグランジンという物質を合成させるなどのいくつかの反応を引き起こし、最終的にはプロスタグランジンが身体の生理状態のコントロールセンターである視床下部に働きかけて、設定体温を上げる。
 身体が設定体温を上げるのは、進化の過程で獲得した、ウイルスとたたかうための生存に有利な性質である。風邪ウイルスが喉や鼻に感染するのは、身体の中でもそこが比較的温度が低いところ(33~34度)だからであって、高い温度に弱いウイルスはそれ以上高温になっている身体の奥深くには入っていけない。つまり、体温が上がり結果的に喉や鼻の温度も高くなるとウイルスの増殖が抑えられるので、発熱は効果的なウイルス増殖の抑制効果を持つ。
 ただし、体温が上がってもウイルスの増殖が低下するだけで、ウイルスが体内から消失するわけではない。最終的には、リンパ球などの免疫細胞の働きにより、ウイルスが処理される必要がある。じつは、さまざまな免疫細胞の働きも、体温が高いほうが速やかに進むことがわかってきている。
 また、発熱などと同時に見られる風邪の典型的な症状のひとつである倦怠感も、ヒトに安静を強いることでそのエネルギーを発熱や防御反応に振り向けることができるため、「有利」な性質だと考えられる。

 発熱によって悪寒と倦怠感を感じたら暖かくして安静にすることで、ほとんどの場合は数日のうちにウイルスに対する抗体が作られ、体内からウイルスが消滅する。身体からウイルスがいなくなると警戒物質のインターロイキンが作られなくなるので、プロスタグランジンも合成されない。脳内からプロスタグランジンがなくなると、視床下部の設定体温は常温に下がる。
 そのため、発熱時の体温では高すぎると感じることになり、今度は体温を下げるように身体が反応する。風邪の回復期に大量の汗をかくのは、高すぎる体温を下げるための働きであり、よくいわれるように汗をかくことで風邪が治るのではなく、風邪が治ったから汗が出るのだ。
 こうして、ほとんどの場合において、いわゆる「風邪ウイルス」によって引き起こされる風邪は薬の助けを借りることなしに自然治癒する。一年中どこにでもいる風邪ウイルスの蔓延する環境の中で生きるヒトは、風邪ウイルスへの対処法を進化させてきたのだ。

 なるほど、よく耳にするプロスタグランジンが働いているというようです。視床下部に働きかけて、設定体温を上げるために、通常の体温では寒気を感じる。そして、回復期には設定体温が下げられるから、今度は身体を冷やすために、汗をかくということになるわけですね。

 子どもの頃、風邪をひいたら分厚い布団にもぐり込んで、身体を熱くして無理やり汗をかいたものです。その後に、なぜかすっきり気分が良くなるので、風邪を治す常道と思っていました。ところが、最近の風邪治療では、そんなことはしないようで、不思議に思っていましたが、その理由がよく分かりました。

 でも、昔風のやり方も、布団にもぐり込んで横になることで身体は休まるし、温まって体温が上がるわけですから、身体からウイルスを消滅・撤退させるには、効果があるような気がしますが、どうなのでしょう。但し、あまり高体温になりすぎないよう、加減が必要かもしれません。

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「ダーウィン医学」の考え方を学ぶ

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「ダーウィン医学」の考え方を学ぶ

 今年(2009年)10月に、ドイツで行なわれた「世界保健サミット」で焦点があてられたという「ダーウィン医学」のことを、この『施術日誌+α』で触れたことがあります。その考え方に興味をもったので、もう少し深めてみたいと思っていたところ、『進化から見た病気 「ダーウィン医学」すすめ』(栃内新著)という本に出会いました。

 まず、「ダーウィン医学」とは何かということを、次のように説明しています(抜粋)。

 ダーウィン医学は、医師であるランドルフ・ネシーと進化生物学者であるジョージ・ウィリアムズによって、1991年に提唱された。誕生してからまだ時間の浅い若い学問であるが、人の身体に起こる病気を中心としたさまざまな不都合を、進化という観点から説明することをめざしている点がきわめてユニークだ。
 病気をこれまでと違う視点から捉え直すことで、ダーウィン医学は多くの新しい発見をもたらした。我々が病気だと思っているさまざまな疾病や疾患といった症状のうち、あるものは身体を守るための大切な防御反応であり、またあるものは人間が作り上げた文明や文化が原因となって引き起こされた「人災」であり、さらには病気を起こすと考えられていた遺伝子が、じつは我々の祖先が生き延びるために有益であったというようなことが、次々と明らかになってきたのである。
 このような発見が新たな治療法に直結するというわけではないが、将来の治療法開発につながったり、治療法の改善に寄与したりするような実際的提案ができることは間違いない。

 本書で扱う「ダーウィン医学」あるいは「進化医学」と呼ばれる学問は、ヒトという生物にとって病気とはどういうものなのかを、ヒトと病原生物の両者の視点を基礎に進化生物学・生理学的に読み解き、病気をよりよく理解し、病気とともに進化してきたヒトという生物を理解しようとする新しい学問分野である。
 今までの医学は、病気と呼ばれる不都合な諸症状をいかにして緩和するかということに心を砕いてきた。そこでは、時として科学的整合性よりも「実際に効くのだからよい医療だ」という、どちらかというと工学的な発想がつよかったのではないだろうか。ダーウィン医学では、病気の諸症状がどのようにして起こっているのかを解明するとともに、そうした症状の多くのものがヒトの進化にとって有利な意味を持っている、あるいは過去において有利な意味を持っていたということを説明しようとする。

 民間療法では、諸症状が出ている局所だけではなく、そこに重点をおきながらも、身体の状態を総体的にとらえて、施術するよう心がけますが、「ダーウィン医学」は、そういった段階を超えて、生物の進化という永い時間の流れの中で病気を捉えているようです。

 また、よく使われる「自己治癒力」とか「自然治癒力」という言葉がありますが、この免疫システムの機能も、病原生物とのせめぎ合いの中で、進化し獲得してきたものと考えると、面白そうです。

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進化的要因にまでさかのぼって考える「ダーウィン医学」

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免疫の仕組みは奥深い ④ 老化と免疫

 年齢を重ねて70~80歳代になると、胸腺という免疫で重要な役割を果たす器官が、ほとんど痕跡程度になってしまいます。胸腺は幼児期4~5歳で退縮をはじめ、10歳代の前半で、重さこそ最大になりますが、かなりの部分が脂肪に置き換わり、40歳代では10分の1になります。

 胸腺は、リンパのT細胞を教育して「自己」と「非自己」を認識する能力を授ける重要な役割を担っています。T細胞には、有効な抗体の生産をB細胞に指示するヘルパーT細胞、ウイルスに感染した細胞を破壊するキラーT細胞、間違って「自己」と反応するリンパ細胞を抑制するサプレッサーT細胞があります。

 胸腺の退縮によって、T細胞を教育して全身に供給する働きが鈍り、免疫機能が低下します。高齢者の直接的な死因のトップは病原体による感染症です。通常は問題にならないような弱い微生物の侵入が、致命的な病気を引き起こすことがあります。

 また、T細胞の供給の低下によって、体内に「自己」のさまざまな成分と反応する物質が現れるようになるとともに、反対に「非自己」による刺激を与えても的確な反応をしなくなります。加齢とともに現れるこれらの反応は、自己免疫症のような急激な症状は起こしませんが、「自己」の細胞や臓器の衰えを進行させることになります。

 『免疫のしくみ』では、胸腺は生命時計であり、その退縮は、「必然的に世代の交代を促す、積極的な生命現象なのかもしれません」と述べています。アンチエイジングをめざす者としては、ちょっとさびしいような気がしますね。自分の経験からして、10歳代前半はそんなに元気だったかなぁ。確かに高齢者が感染症に弱いのは分かりますが、胸腺だけが、免疫機能を牛耳るものなんでしょうか。

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免疫の仕組みは奥深い ③ 癌と免疫

 『免疫のしくみ』によると、免疫の定義を「『自己』と『非自己』を識別して、個体としての独立性や統一性を守る仕組み」としています。この「自己」と「非自己」の識別が、癌に関しても重要なキーワードのようです。

 「癌は、もともとは『自己』の一部であった細胞が変化していまい、『自己』の秩序から逸脱して自分勝手に無原則な増殖を始めることによって起こります。癌細胞は、いわば体内で『非自己』化してしまった細胞です」

 「じつは、私たちの体内では日常的に一定の頻度で癌細胞が発生しているのですが、そのほとんどは極めて早期に「ナチュラルキラー(NK)細胞」と呼ばれる免疫細胞によって破壊されてしまうのです」。「発癌の初期段階で働くナチュラルキラー細胞に続いて、(ヘルパー)T細胞の一種も、癌細胞の表面に現れる特有のタンパク質分子(抗原)を見つけ出し、他の(キラー)T細胞の助けを借りて癌細胞の排除に乗り出します」。NK細胞も、T細胞も、リンパ球です。

 それなら、癌細胞の増殖は免疫で抑えられるはずなんですが、実際にはそううまくは行かないのです。「このように免疫が働いているのに、しばしばそれをかいくぐって癌細胞は発育してしまう。癌細胞がもともとは『自己』の細胞であったという背景がそこに深く関係していますし、癌細胞自身もさまざまな手を打って免疫を目くらましするのです」。

 癌細胞は、『非自己』と認識されないように、表面から抗原のみならず、いろいろなタンパク質分子を消し去ることもします。また逆に癌抗原の一部は、サプレッサーT細胞を刺激して免疫反応を抑えたりすることもあるそうです。しかも、NK細胞は年齢とともに、働きが落ちてきます。

 そうやって生き残ったやり手の癌細胞を、「安保免疫学」のようにストレスを避けて、しかも適度の運動を行なう健康生活による自律神経のバランスを保つことで、排除できるのか。確かに癌になりにくくはなるかもしれませんが、果たして、転移したような癌を、現代医学の定番療法である「手術と薬物療法と放射線療法」をストップしても、いやその方がより効果的に自然治癒させることができるというのか。まだ自然治癒力の勉強は続きます。

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免疫のしくみは奥深い ② 脳神経系・内分泌系・免疫系の関係

 『免疫のしくみ』には、「近代医学は、肝臓・腎臓・心臓・肺・脳などというように臓器単位でその働きや病気を研究するのが中心だったので、まとまった臓器を作らない免疫系が初め盲点となっていたことは否めません」と書かれています。

 「初め盲点となっていた」の「初め」が何時のことか定かでありませんが、20世紀半ばから本格的な研究がすすめられたそうです。この本の出版は、2001年です。この時点でも、すでに研究は、かなり進んでいるように見受けられます。その後の7年間での免疫学の発展についてはさらに研究してみる必要があります。

 特に、「脳神経系・内分泌系・免疫系という三つの調節機構が、じつは平衡的に働き合って個体の全体性を保っている」として、脳神経系・内分泌系・免疫系の関係については、今後の研究に期待するとして、次のように述べています。

 「免疫細胞によって作られるインターロイキン(IL)1というサイトカインが、脳に働いて発熱を起こさせる」「逆に、脳細胞どうしの情報伝達に使われる『神経伝達物質』のいくつかを受け入れるようなレセプター(受容体)が、免疫細胞の表面にも備わっています。なかでも、ストレスを感じたときに脳内でつくり出される物質が免疫細胞に影響を及ぼし、免疫系全体の働きを高めたり低めたりしています。もっと驚くことに、脳細胞が免疫細胞と同じ物質を作ったり、反対に免疫細胞が脳細胞を同じ物質を作ったりもするのです」

 そして「気分と体調の相関関係は昔から経験的に知られ、『病は気から』という言葉で言い表されてきましたが、そのメカニズムが科学的にも徐々に解明されつつあると言っていいでしょう。細かな実態はまだ不明ですが、癌などを始めとする、ある種の病気に対して精神面からアプローチする治療法も、あながち的外れではありません」と述べています。

 これは、「安保免疫学」のいう交感神経~アドレナリンの分泌~顆粒球の活性化、副交感神経~アセチルコリンの分泌~リンパ球の活性化。二つの自律神経のバランスのくずれから病気がおこるとする「白血球―自律神経支配」に非常に近い考え方です。

 『免疫のしくみ』と「白血球―自律神経支配」の理論の時期的関係とその中身について、研究してみる必要がありますが、脳神経系・内分泌系・免疫系の関係についてよく似た捉え方をしているのは、興味深いところです。

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免疫のしくみは奥深い ① 2兆個の免疫細胞

 自然治癒力のことから、免疫学へと発展してきましたが、今度は「安保免疫学」から少し離れて、免疫を検討してみたいと思います。東京理科大学生命科学研究所の安部良教授監修の『免疫のしくみ』(PHP研究所)をもとに、アトランダムに免疫の世界をたどっていきます。

 「ひとりの人間の身体は、約60兆個の細胞で成り立っています。そのうち、約2兆個の細胞が免疫を担っていて、重さにすると約1キログラムに達します。脳をつくる細胞が約1000億個、肝臓の細胞が2500億個ですから、これらの臓器と比べてもはるかに数の多い細胞が、血管や、血管と同じように全身に張りめぐらされているリンパ管の中を流れただよい、皮膚、気管、腸管などにも分布して動きまわりながら、私たちの体内で働いていいるのです」

 「脳の細胞が神経線維でしっかりとつなぎ合わされているのとは違って、免疫系の細胞は一つひとつが独立して浮遊している細胞なのです。また脳の細胞が生後は分裂したり入れ替わったりしないのに対して、免疫系の細胞は毎日100億個程度が寿命を終えて死に、同じ数の細胞が新たに生まれています」

 免疫系の細胞、2兆個ですか、思っていたより多いですね。脳や肝臓の細胞数よりはるかに多いとは驚きです。しかも、それが固まったところにあって機能するのではなく、身体の中をバラバラに漂いながら、いざという時には、伝達物質で連絡を取り合って、コラボレーションをするのですから不思議です。

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『自律神経と免疫の法則』を研究しています

 これまで、安保理論を分かりやすく解説したものを読んでいましたが、一般読者向けに分かりやすくしたためか、根拠が跡付けられていないため、一方的・独断的な感じを受けていました。

 しかし、昨日さらっと一部紹介した安保徹著『自律神経と免疫の法則』を読み進めてみると、かなり専門的ですが、研究資料も豊富で、理論的な根拠がよく分かります。

 自律神経の作用と顆粒球、リンパ球の関係、それと日内リズムや気候との関係、さらに顆粒球と微生物感染、リンパ球とウイルス感染などについて、研究資料に基づいて説明されています。

 カイロプラクティックは現在のところ、もっぱら整形外科的な筋・骨格系の疾患に対処するようになっていますが、もともとは、脊柱のズレによる神経の圧迫を矯正することにより、神経伝達物質の循環を回復して、全身に起こる症状を改善するのが本来の姿です。

 全身の器官を調整するのは、自律神経系統になります。そういう意味で、自然治癒力と自律神経・免疫系の関係については、以前から関心を持っていましたので、とても興味深い分野です。まだ読み始めたところですので、これからが楽しみです。

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自然治癒力は発熱から?

 安保徹教授の書籍を、引き続き研究してます。社会認識などに少し違和感を覚えることもありますが、医学的な問題はなかなか興味深く読んでいます。

 『病は気からの免疫学』という本のなかに、「自然治癒力の本体」という章があります。自然治癒を極限までつきつめると、「整体の発熱」に行きつく。生体の発熱は代謝の亢進であり、その高まりによって病原体を除き、壊れた組織を修復することができると述べています。

 それに対して「現在、医学では熱を嫌って消炎鎮痛剤やステロイドが使われることが多いので、病気がなおりにくく」なると指摘しています。

 また、「抗ウイルス剤より自然治癒」と題して、炎症、痛み、発熱は、患者にとって不快ですが、治るためのステップであり、炎症を起こして血流を増やし、発熱してリンパ球を増やし活性化して、ウイルスとたたかうことが大切で、これが自然治癒であると記しています。

 安保氏は、これまでの医学的治療法を否定しているようですが、これはなかなか難しい問題です。そのような判断は、民間療法者としての立場と力を超えた次元の問題です。しかし、「自然治癒は発熱から」というテーマは、今後の施術に対する見方を検討する課題を提起しているように思えます。

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